浅いっぽい

日記

 

本の効用


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 ちょっと前にIT会社の社長が「本を読まないやつは人間じゃない」と発言して騒動になっていた。おそらく本を読む人を同僚にしたい、と言いたかったのだろうが、言葉選びで損をしていた。
 
 一方で、本の効用とはなにかという研究と分析がある。

 原始時代から中世まで、人類は邪悪で残忍で冷酷で、殺人強姦略奪が当たり前だった。
 一例として、中世の欧州においての楽しみは残酷なもので、猫をどちらが早く殺せるかという競技を、平民から王族が観に行って大笑いしていた。一三世紀の人口あたりの殺人発生率は、現代の10~100倍。普通の人々もすぐに短剣を抜いて、相手の鼻を削ぎ、殺していた。
 タックマンが「中世の人々の行動に顕著な幼児性と、あらゆる衝動を抑制する能力の欠如」と記しているような世界。中世以前となるともっと酷い。

 しかし、だいたいの近現代人は、同じ人間を苦しめ殺すことに嫌悪感を覚え、動物虐待は気持ち悪いものとするようになっているが、いつからなのか。
 エリアスという歴史社会学者が調査すると、歴史のとある時期から明確に人間が変わっていった。それは中世後期から十八世紀にかけてだった。原因を探ったが、宗教はそれ以前からあるので無関係。文明の進歩も無関係だった。
 あとを引き継いだ学者は、経済成長で人が豊かになったからと予測したが、産業革命まで、大多数の人類の栄養や経済状態はたいして変わっていない。

 歴史学者のリン・ハントが調べると、活版印刷の広がりと、人間の暴力性、残虐性の現象が重なると分かった。
 中世から十八世紀、活版印刷の安価化と識字率の向上によって、本が人々の間で広く読まれ始めた。本といっても、それまでの英雄や貴族や王、聖者たちの活躍や業績を描く叙事詩は、まったく人の心を変えなかった。
 が、新しく出てきた文学と小説は、初めて一般の人々の願いや希望、生活や内心を描いた。
 そこで初めて人の心に「あ、老若男女の他人、異教徒異文化、異国の人でも、自分と同じ喜怒哀楽がある人間なんだ。とすると、動物も痛みがあるんだ」という認識が広がったことが大きい、という説である。

 となると、人類史でほとんどがずっと不可能だったのに、現代人だけ本を読まずに、独力で抽象的思考や共感が勝手に生まれてくる確率はかなり低い。
「本を読まないやつは人間じゃない」を正確に言うなら「本を読まない人は中世以前の内心のままで、近現代人の心を持っていない可能性が高い」ではなかろうか。
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